ブルボンズ「ハワイハワイハワイ」の歌詞のどこが凄いか。

私が宮古島で初めて聴いたブルボンズ「ハワイハワイハワイ」の

どこがいいかって言うと、何てったって、歌詞の持つ力だ。

以下、歌詞を眺めてみる。

 

いつかハワイに行こうぜ
できるだけ金を持って
俺が悪かったよ
いつかハワイに行こうぜ
ここを出ていくんだ
俺が悪かったよ

夜の街を浮浪者が歩く
俺はそれをただ眺めている
ハワイへ
woo!ハワイへ
ハワイへ
俺が悪かったよ

いつか宇宙に行こうぜ
月の石を持って
帰ろう手をつないで
いつか宇宙へ行こうぜ
木星に家を建てて
子どもを育てような

星を抱いて浮浪者は眠る
俺はそれをただ眺めている
宇宙へ
woo!宇宙へ
宇宙へ
俺が悪かったよ

夜の街を浮浪者が歩く
俺は空をただ眺めている
ハワイへ woo!ハワイへ
ハワイへ
俺が悪かったよ

ハワイへ Let'go ハワイへ
ハワイへ
俺が悪かったよ

こうして起こしてみると、とってもチープでめちゃくちゃな歌詞にしか見えない。
でも、私が涙線を腫らしたのは、浮浪者のサビのところだ。

♪星を抱いて浮浪者は眠る
俺はそれをただ眺めている

♪星を抱いて浮浪者は眠る
俺はそれをただ眺めている

浮浪者って、ふつうホームレスをさすが、この詩の中の浮浪者は、
ただのホームレスじゃない。
これを超越している。
強いて言うと、ボヘミアンに近い存在。
そして、俺は感想を述べずに、「それをただ眺めている」。
この部分がとっても美しい。

そして第5連では、俺の視線は遥か上の方に転移する。
「俺は空をただ眺めている」
こうして、ハワイから宇宙への遷移が完成する。
この詩の中のハワイは別にハワイでなくてもいい。
ハワイは「どこか遠いところ」の隠喩だ。

宇宙もそう。
ハワイはいかにも古臭いし、宇宙やましてや木星は唐突だ。
でも、ハワイの代わりに「海の向こう」とかにしてしまうと、

収まりがつくが、逆にありふれている。
宇宙や木星もなんだかドラえもんのようで、漫画チックだけれども、

これに勝るインパクトのある言葉はない。

「俺が悪かったよ」って、俺は(たぶん愛する女に)何をした?
詩の中でまったく説明されていない。
演歌や歌謡曲の凡庸な歌詞は

俺が悪い理由を理屈づけて詩興を削いでしまう。
何も説明しないことで、聴き手の想像力を喚起する。

とてもうまいやり方だ。
何より、浮浪者を詩にしてしまうなんて、

ブルボンズ(かとうたくみ)はどこまで天才なんだ。

私はロックバンドの詩でブルーハーツの「リンダリンダ」が好きだ。
この浮浪者の詩はあの「ドブネズミ」以来の衝撃だ。
日本ロックはまだまだ捨てたもんじゃないね。